■ 概略について

2013年9月29日、中国(上海)自由貿易試験区は市場改革を全国に先駆けて試行する実験エリアとして開設された。その後、この上海自由貿易試験区の経験を踏まえ、2015年4月21日には広東省、天津市、福建省に第2弾となる自由貿易試験区が正式に開設された。これら4ヵ所の自由貿易試験区では共通のネガティブリストが適用されている。
中国(天津)自由貿易試験区は中国北部初の自由貿易試験区であり、その全体的な方針としては、京津冀首都圏(北京市・天津市・河北省)の協同発展による高水準の対外開放プラットフォームを構築し、「一帯一路」政策に基づき環渤海経済圏の発展を促進させ、3~5年の改革試験期間を経た後、貿易の自由度、投資の利便性、ハイエンド産業の集積、金融サービスの完備、法制度の整備、行政監督管理の効率性と利便性などの連動効果が明白な、国際的にも一流の自由貿易区になることを目指している。

 

1.自由貿易試験区構成地域

 中国(天津)自由貿易試験区は「天津港東疆片区」、「天津空港片区」、「濱海新区中心商務片区」の3地域から構成され、総面積は119.9㎞²である。

地区 面積 重点分野
天津港東疆片区 30.0㎞2 海運物流、国際貿易、ファイナンス・リース等のサービス業
天津空港片区 43.1㎞2 航空飛行、装備製造、次世代情報技術等のハイエンド製造業と研究開発・設計、航空物流等の生産性サービス業
濱海新区中心商務片区 46.8km2 金融、インターネット、国際貿易、越境EC等

 

【一】天津港東疆片区

 天津港東疆片区は天津港の東北部にあり、総面積は30平方キロメートル。中国北部における国際航空センターおよび国際物流センターの機能を果たす機関でもある。同区では、国際船舶登記制度、国際空運租税政策、空運金融およびリース業に関する政策が試験的に実施されている。2017年4月時点で入居企業は5289社、そのうち登録資本金が1億元以上の企業は967社ある。また、同区内に10平方キロメートルの天津東疆保税区が設立された。現在までに10万トン級コンテナバース6か所、10万トン級バルク貨物バース2か所、4万トン級バルク貨物バース2か所が建設された。

【二】天津空港片区

 天津空港片区は天津都市部の濱海新区と接する場所にあり、総面積は43.1平方キロメートル。民用航空、装備製造、電子情報、バイオ製薬などの産業群に重点を置いて発展する方針を示している。2016年天津空港片区の総生産額は1704億元、貿易総額は157億ドル、輸出額は32億ドルとなっている。2017年4月時点で入居企業は11877社。同区内において合計で2.96平方キロメートルの総合保税区と空港保税区が設立された。今後、中国北部の貨物航運センターとなることを目指して、現在7.5平方キロメートルの天津空運物流区の開発を進めている。

【三】濱海新区中心商務片区

 濱海新区中心商務片区は濱海新区のコアエリアにあり、于家堡区、响螺湾区、天碱・解放路区、大沽区、新港区、藍鯨島・大沽砲台区の6区域から構成される。入居企業は13000社、そのうち登録資本金が5000万元以上の企業は1513社、外資企業は269社ある。同区は、金融技術革新、科学技術・インターネット、国際貿易、越境電子商取引などの産業群を中心に発展する方針である。

地区 面積 重点分野
于家堡金融区 3.86km2 現代的な施設と国際サービス機能を備えた金融・ファイナンス関連など
响螺湾商務区 1.59km2 国有企業に関する事業、研究開発など
天碱・解放路地区 3.83km2 貿易業など
大沽地区 13.7km2 住宅、観光業など
新港地区 6.6km2 行政センター、生活関連サービス業など
藍鯨島・大沽砲台区 3.77km2 住宅、生活関連サービス業など

 

2.自由貿易試験区に関連する法規

 中国(天津)自由貿易試験区に関する法規は、中国(上海)自由貿易試験区の政策を踏襲しつつ作られており、共通のネガティブリストが適用されている。下記に一部の法規を列挙する。

1 中国(天津)自由貿易試験区総体方案
2 中国(天津)自由貿易試験区管理弁法
3 中国(天津)自由貿易試験区条例
4 自由貿易試験区外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2017年)
5 中華人民共和国天津海関通知
6 中国(天津)自由貿易試験区外貨管理改革試験点の実施細則
7 自由貿易試験区の税務サービスに関わる改革措置に関する通知
8 中国(天津)自由貿易試験区における輸入税政策に関する通知
9 国務院直接投資外貨管理政策の更なる簡素化と改善に関する通知
10 外商投資産業指導目録(2017年改正)
11 中国(天津)自由貿易試験区内の企業登録管理規定

 

3.自由貿易試験区の主要政策

1.投資の利便化

  • ネガティブリストに基づき管理。ネガティブリスト以外の項目に対しては投資届出管理制度を適用。
  • 外資投資プロジェクト審査、外資企業の設立・変更等の手続きが簡素化され、また三証(営業許可証、税務登記証、組織機構コード証)を統一する「三証合一」等の政策により、投資手続きが利便化された。
  • 製造業、金融サービス業、交通・空運サービス業、ビジネスサービス、技術サービス等の分野において外資参入の制限が緩和され、基準の統一化を推進。

 

2.貿易モデルのレベルアップ

  • 越境ECを中心に、海関監察、免税、越境支払い、物流などのシステムを提供。
  • 知的財産権に関するサービスを中心に、東北エリアの知的財産権運営センターを設立し、関連サービスを提供。
  • 天津港と濱海国際空港の連動。航運ファイナンス、航運保険業などを発展。
    • 一線(国境線)開放:企業が「輸入積荷明細書」によって貨物を自由貿易区に直接搬入したうえ、「輸入貨物届出書」によって主管税関に報告手続を行うという新たな税関の監督管理モデル(「先入区、後報関」)や、輸出入届出書の簡素化、国際中継、貨物の集中・分散等の業務における輸出入手続の簡素化等の政策を実施。
    • 二線(自由貿易試験区以外のエリア)の効率的管理:電子情報ネットワークの強化、輸出入貨物リストの対比、帳簿管理、貨物実地照合等の手段による監督管理の強化、電子帳簿監督管理の強化、自由貿易区内の貨物の流通の簡素化、入居企業の信用等級管理制度等の政策を実施。

 

3.金融領域における改革

  • 中国(上海)自由貿易試験区の租税政策は中国(天津)自由貿易試験区にも適用。
  • 自由貿易試験区内の人民元使用を拡大、外貨管理などの先行試行。

 

4.京津冀エリア協同発展戦略

  • 中国(天津)自由貿易区の先端産業をきっかけに、京津冀エリアの第3次産業や新市場の開拓などを推進。
  • エリアの一体化を推進し、サービス、人材、技術、物流の共有を図る。

 

5.政府職能の改革

  • 政府機能の透明化、オンライン化。
  • 審査プロセスの簡素化、監督制度の健全化。
  • 国際化、市場化、法制化に対応するサービス体制の推進。