■ 概略について

 2013年9月13日国務院より中国(上海)自由貿易試験区全体方案に関する通知が発表され、かねてよりその設置が話題となっていた上海自由貿易試験区の概要が明らかになった。 同区は同年9月29日全国に先駆けて、市場改革の実験的要素を含んだ形ではじまった。その後、2014年12月28日、中国の経済成長のカギを握る政策の一つとして、中国(上海)自由貿易試験区の経験を活かし、広東省、天津市、福建省に自由貿易試験区を設立すること、及び中国(上海)自由貿易試験区の地域範囲の拡大が国務院により決められた。以下に上海自由貿易試験区の概略について述べていく。

 

1.自由貿易試験区構成地域

 2014年12月28日より、上海自由貿易試験区は従来の28.78km2から120.72km2まで拡大され、総合保税区、陸家嘴金融区、金橋開発区、張江高技術区の4地域から構成されている。

【一】
 総合保税区は外高橋保税区を中心に、外高橋保税物流園区、洋山保税港区、浦東空港総合保税区の4つの保税特殊監督管理区より構成されている。それら地域の概要については下記の図に示したとおりであるが、4地域を合わせた総面積は28.78km2となっている。総合保税区は拡大前の上海自由貿易試験区であり、投資管理、貿易の利便性の向上、金融・サービス業の開放措置、税関監督、検査・検疫等の政策が実施されている。

【二】
 陸家嘴金融区は陸家嘴金融貿易区、世博前灘地区から構成され、総面積は34.26km2である。陸家嘴金融区は上海国際金融センターの核心エリアとして、国際金融規制に準拠した金融システムの革新、現代サービス業に適応する制度の導入等により、投資利便性の向上、貿易自由化、金融システム国際化を実現した経済環境を構築することを目的とする。重点的に発展させる分野としては空運、金融、観光、スポーツ等がある。

【三】
 金橋開発区の総面積は20.48km2である。同区は1990年に設立され、現在は上海の重要な製造業エリアとなり、今後国際競争力を強化するため新興産業に重点をおいて発展させる予定である。

【四】
 張江高技術区はバイオ医薬、情報技術を中心としたハイテク産業の集積地域で、総面積は37.2km2である。同区は上海自由貿易試験区の設立と連携することで、技術革新、研究開発、人材確保等に焦点を当て、主要機能の革新的な創造力の更なる向上を目指している。

 

2.自由貿易試験区に関連する法規

 現在上海自由貿易試験区に関する法規については、現在関係各部より出され、その数は20を超える。下記にその一部を挙げている。これらのうち、中国(上海)自由貿易試験区全体方案と中国(上海)自由貿易試験区管理弁法はその中核をなすものであり、自由貿易試験区の目的、あり方などが規定されている。

1 中国(上海)自由貿易試験区全体方案
2 中国(上海)自由貿易試験区管理弁法
3 中国(上海)自由貿易試験区外商投資プロジェクト届出管理弁法
4 中国(上海)自由貿易試験区外商投資企業届出管理弁法
5 自由貿易試験区外商投資参入特別管理措施(ネガティブリスト)(2019年版)
6 中国(上海)自由貿易試験区銀行業監督管理関連問題に関する中国銀行業監督管理委員会の通知
7 資本市場の中国(上海)自由貿易試験区促進支持の若干政策措置
8 上海における中国資本五星旗(中国国旗)でない国際運行船舶の沿海運輸試行に関する交通運輸部の公告
9 中国(上海)自由貿易試験区条例
10 中国(上海)自由貿易試験区内において関係する行政法規および国務院の認可を経た部門規則規定の参入特別管理措置を一時調整実施することに関する決定
11 直接投資外貨管理政策の更なる簡素化と改善に関する通知
12 自由貿易試験区外商投備案管理弁法(試行)
13 自由貿易試験区の外商投資国家安全審査試行弁法

 

3.上海自由貿易区全体方針概要

 上海自由貿易試験区における全体方針については、「投資領域の開放拡大・規制緩和」に関するものと「投資管理等手続きの簡素化」に関するものを主としている。以下にその内容について概略を記した。

1.投資領域の開放拡大・規制緩和

 投資領域の開放拡大・規制緩和については下記の表に示したように、6分野18業種に及ぶサービス業関連に対する開放が行われ、これまで外資系企業の参入が難しかった業種への参入が可能になっている。また、これら以外の業種については外資の参入を制限・禁止するネガティブリストに記載された122項目以外の分野への参入も認められている。

分野 業種 主な開放・規制緩和策
金融分野 銀行業 中外合併資本の設立、オフショア金融等
健康医療保険 外資による健康医療専門保険会社の設立
ファイナンスリース 中外合弁、中外協力の国際船舶運輸企業の外資株の割合制限緩和等
航運分野 遠洋貨物運輸 中外合弁、中外協力の国際船舶運輸企業の外資株の割合制限緩和等
国際船舶管理 外資単独による設立の許可
商業貿易分野 電信付加価値 外資系企業がゲーム機の生産と販売に従事することを許可
ゲーム機器等生産販売 外資系によるコールセンター等情報サービス業への開放
専門分野 弁護士業 中国系法律事務所と外資系法律事務所の業務協力緊密化
信用調査 外資による信用調査会社設立
旅行 中外合弁会社の設立の許可
人材仲介 外資人材仲介会社最低資本引下げ等
投資管理 株式制外資投資性企業の設立許可
工事設計 初回資質認定申請時における過去業績提出義務の撤廃(上海市に対するサービス)
建築 中外建設プロジェクト時における中外投資比率の撤廃
文化関連分野 公演マネージメント 外資による公演マネージメント会社の設立および上海でのサービス提供
娯楽施設 外資による娯楽施設の設立およびサービス提供
社会分野 教育研修/職業研修 中外合弁の経営性教育機構の設立等
医療 外資独資による医療機構の設立

 

2.「投資管理等手続きの簡素化」について

 同簡素化については、まずネガティブリスト記載外業種における、認可制から届出管理制度への移行である。これまで外資企業の設立には担当部門による審査認可等が必要で多くの時間を要したが、今後届出制に移行することでこれらの煩雑な手続きが必要なくなることとなる。 また、それ以外にも最低登録資本金の撤廃、現金出資比率の撤廃、登録資本金初回最低払込金額の撤廃などがある。 貿易面関連輸入手続きについては、「一線(国境線)の開放」「二線(自由貿易試験区以外のエリア)の効率的管理」「自由貿易区内貨物の自由移動」の概念を導入している。国境線をオープンにし、自由貿易試験区と中国内エリアとの境界線において、電子情報ネットーワーク、輸出入リストの対照などを通じて、管理を効率的に行っていくことである。

 

 上海自由貿易試験区は当初より2~3年という短い試験期間内に様々な取り組みを検討実施しようとしている。現在すべての政策が完全に出揃ったわけでなく、今後も関連法規の見直し、他法規との整合性などにより、現時点での(2015年10月末時点)の政策が変更される可能性もある。